TetherPro Optima 10G。
わざと充電できなくした、テザー撮影用のケーブル
テザー撮影のケーブルは、給電できないほうが落ちない。Tether Tools が公式にそう書いている。同じ12,000円台に、給電240Wをうたうケーブルが並んでいるのに、だ。
このケーブルを選ぶ理由
この記事の情報の扱い
- 確認できた事実
- PD非対応の理由と仕様はTether Tools公式のFAQと製品ページ、対抗馬のテザーワンはよしみカメラ公式と銀一の資料で確認した。実売価格は2026年8月31日にAmazon.co.jpの国内正規品で、長さ違いをそろえて見ている。
- 合理的に導ける評価
- 1mあたりの単価、給電量の53倍という比較、RAW転送の所要時間は、公表値からこちらで計算したもの。転送時間は理論値。
- 確認できないこと
- 実際に接続が切れにくくなるかは検証していない(メーカーの言い分として書いている)。1.8mの版は富士フイルムGFXシリーズに使うなと公式が名指ししているが、他の長さでの相性は分からない。耐久試験の回数はメーカーの公表値。
カメラを充電しながら撮ると、テザーが途中で切れる
テザー撮影で困るのは、速度ではない。途中で切れることだ。
Tether Tools は、その原因のひとつをはっきり名指ししている。USB Power Deliveryでカメラを充電しながら大きな画像を転送することだ。
公式FAQの説明はこうだ。転送と充電を同時にやると接続が不安定になり、ケーブルの寿命も縮む。だからカメラメーカーは一般に、テザー撮影中のUSB充電を切ることを勧めている。
ところが機種によっては、その設定が見つけにくい。そもそも切れない機種もある。
そこでこのケーブルは、Power Deliveryを最初から持たない設計にした。撮る前にカメラの設定を思い出さなくていいし、充電を切れない機種でも安定して使える、という理屈だ。
ケーブルの機能を削って、それを売り文句にしている。ふつうは逆をやる。
この一点だけで、僕はこのケーブルの側を信用した。
線の途中のICチップが、4.6mでも信号を保たせる
もうひとつの特徴は、ただの導線ではないことだ。
線の途中に黒い箱が付いている。これがTetherBoostで、中身は信号を打ち直す集積回路(IRC)だ。信号の劣化を補って、届く距離を伸ばす。
長さによっては1本のケーブルに複数入る。外部電源は要らない。
USB 3.2の規格上、10Gbpsで引ける長さは短い。4.6mや9.4mが成立しているのは、この回路が入っているからだ。
公式の数字を並べる。
10Gbps
ICチップ2基
既定 5V/0.9A
4.6m/9.4m
非反射ブラック
9.4m=0.42V
線が太いのは見栄えではない。太い線ほど熱が逃げて、TetherBoostの回路が冷えるから、というのがメーカーの説明だ。
長さは日本のAmazonで選べる4本を書いた。アメリカの公式サイトには3mもあるので、そのうち入ってくるかもしれない。
Macでは10Gbpsが天井。20Gbpsは届かない
ここで、対抗馬の話をする。
よしみカメラのテザーワンだ。5.5mで最大20Gbps、給電は240W。銀一オンラインショップで12,100円。
数字だけ見れば完勝に見える。ただしMacでは20Gbpsが出ない。
20Gbpsの正体は USB 3.2 Gen 2x2 という規格で、Appleがこれに対応していない。技術仕様に載っているのは USB 3.1 Gen 2=10Gbpsまでだ。Apple シリコンでも変わらない。
Macに挿した瞬間、両方とも10Gbpsのケーブルになる。20Gbpsという表記に金を払う意味が、ここで消える。
そもそも、テザー撮影は速度で困る仕事ではない。
10Gbpsは1,250MB/秒だ。60MBのRAWなら理論値で0.05秒。200枚まとめて送っても9.6秒しかかからない。
実際にはカメラ側の書き出しで待たされるので、この数字がそのまま出るわけではない。それでも言えることは変わらない。ケーブルの速度は、テザー撮影では余っている。
だから20Gbpsは、この用途では買う理由にならない。
テザーワンと32円差。違いは充電できるかどうかだけ
値段を並べると、笑ってしまう。
(Macでは10Gbps)
5V/0.9A=4.5W
太く硬め
柔らかい・蓄光の黄色
差は32円だ。長さはテザーワンが90cm長い。1mあたりで割ると437円安い。
値段では決まらない。 32円の差で正反対の設計が並んでいるので、選ぶ基準は財布の外にある。
決まるのは給電だ。ここで数字を出す。
Optimaがカメラ側に流せるのは5V×0.9A=4.5W(公式FAQ。カメラ側のRp抵抗は56K)。テザーワンは最大240W。53倍の開きがある。
4.5Wは、ミラーレスを撮影しながら動かせる電力ではない。Optimaを選ぶなら、電源は別に用意することになる。予備バッテリーを回すか、ダミーバッテリーでコンセントから取るかだ。
逆に、テザーワンで給電しながら撮るなら、Tether Toolsが名指ししたリスクをそのまま抱える。カメラ側のUSB充電を切れば回避できるが、それは「1本で済ませる」という買った理由を捨てることになる。
まとめると、分かれ目はこうだ。
- スタジオで電源が取れる=Optima。給電はコンセントから取ればいい。接続の安定を優先する
- 電源が無い現場で長時間=テザーワン。1本で給電まで済ませる価値のほうが大きい
9.4mまで伸ばすと差が開く。Optimaの9.4mライトアングルが29,287円、テザーワンの10mが27,280円から。ここでも2,000円ほどOptimaが高い。
長さで買うならテザーワン、安定で買うならOptima。この順番は最後まで入れ替わらなかった。
割り切っている部分
いちばん大きいのは、いま書いた給電できないことだ。カメラの電池は自分で管理することになる。
次に保証が1年。テザーケーブルは踏まれて曲げられて消耗する部品なので、ここは短く感じる。
そして硬い。線を太くして熱を逃がす設計の裏返しで、リキッドシリコンのテザーワンのようには巻けない。
細かいところでは、1.8m(インラインTetherBoost無しのほう)はFUJIFILMのGFXシリーズに使えないとメーカーが名指しで注意している。他の長さは問題ない。
もうひとつ、このケーブルは一方向だ。片側がホスト(パソコン)、もう片側がデータ源(カメラ)と決まっている。カメラ制御と画像転送は同時にできるが、汎用のUSBケーブルとして雑に使い回すものではない。
最後に、Amazonのレビュー数はライトアングルの4.6mに集中している(240件)。ストレートは28件だ。現場で選ばれているのはL型のほうだと分かる。カメラの端子を守る向きに曲がるので、そちらが自然ではある。
選ぶときに見る順番
順番を間違えると、高いケーブルを買っても現場で困る。
- テザー中に電源が取れるか。取れないなら給電できるケーブルを先に考える
- 使っているカメラがUSB充電を切れるか。切れない機種ならPD非対応の側が安全
- 要る長さ。4.6mか5.5mかで、机からカメラまで届くかが決まる
- コネクターの向き。カメラ側はL型のほうが端子に無理がかからない
やりがちなのは3から入ることだ。長さと値段だけ見ると、給電の有無を見落とす。
先に決めるのは、現場にコンセントがあるかどうかだ。
結局、現場で決まる
こっちを選ぶ
- スタジオや室内で、電源が取れる
- テザーが途中で切れて困ったことがある
- カメラのUSB充電を切る設定が見つからない
- 4.6m以上の距離を引きたい
テザーワンのほうがいい
- 電源が無い現場で長時間まわす
- ケーブル1本で給電まで済ませたい
- 柔らかくて巻きやすいほうがいい
- 暗い現場で足元のケーブルを光らせたい
僕は建築が中心で、テザーを引くのは室内の竣工撮影だ。コンセントはたいてい生きている。
だからこの2本なら、迷わず給電の無いほうを取る。撮影の途中で接続が切れる数分は、電池を替える数分より高くつく。
機能を削ったことを堂々と売り文句にするメーカーは、正直に言って好きだ。
よくある質問
テザー撮影のケーブルは給電できたほうがいいですか?
Tether Tools は逆のことを公式に書いています。大きな画像ファイルを転送しながらUSB Power Deliveryでカメラを充電すると、接続が不安定になりケーブルの寿命も縮むため、カメラメーカーはテザー撮影中のUSB充電を切ることを一般に推奨している、という説明です。機種によってはその設定が見つけにくかったり、そもそも切れなかったりするので、TetherPro Optima 10G は最初からPower Deliveryを持たない設計にした、と書かれています。
TetherPro Optima 10G はいくらですか?
2026年8月31日にAmazon.co.jpの国内正規品で、4.6mのストレートがオレンジ12,132円・ブラック12,120円(いずれも税込)でした。同じ4.6mのライトアングルは13,798円、9.4mのライトアングルは29,287円です。よしみカメラのテザーワン5.5mは銀一オンラインショップで12,100円なので、4.6mのOptimaとの差は32円です。
20Gbpsのテザーケーブルを買えば転送は速くなりますか?
Macでは速くなりません。Appleの技術仕様にあるのは USB 3.1 Gen 2=10Gbpsまでで、20GbpsのUSB 3.2 Gen 2x2 には対応していないためです。加えてテザー撮影で流れるのは1枚ずつの画像で、60MBのRAWなら10Gbpsの理論値で0.05秒、200枚まとめても9.6秒しかかかりません。ケーブルの速度はテザー撮影では余っています。
Optima 10G でカメラに給電できますか?
できません。Power Delivery非対応で、公式FAQによるとカメラ側のRp抵抗は56K、既定の電流は5V/0.9A=4.5Wです。ミラーレスを撮影しながら動かせる電力ではないので、長時間のテザーではバッテリーか外部電源を別に用意することになります。
TetherPro Optima 10G USB-C ケーブル(4.6m・ストレート)
価格は2026年8月31日にAmazon.co.jpの国内正規品で確認した金額(税込)です。変わるのでリンク先で確かめてください。